館シリーズ感想(三冊分)

時計館の殺人 (講談社文庫)時計館の殺人」 綾辻行人
初めて読んだのは、確か高校二年かそこらだったと思う。結構分厚い本だったよなぁ、と思いながら再読したわけだが、厚さは普通だった(笑)。京極氏の文庫の半分もなかったので、びっくりした。
さて、感想。これは……よく出来た話だな、と感心。殺人事件のトリックも面白かったけれど、事の真相や過去の出来事は、予想もしてなかった話で、こりゃ賞とるわーと思った。
迷路館の時も感じたことだけど、外に出られないという状況の中、大勢いた人が次々といなくなっていく、ってのは紙の上に書かれていることとは言え、恐怖感は割増し。物語山場(?)で、江南君が襲われ、その後鹿谷が救出にきた時は、体に入っていた力がすっと抜けたような気分になった。よかったよかった…。
以下ちょっと(かなり?)ネタバレになるのでご注意。
娘のために時計に細工を施していたというのは、その溺愛ぶりをひしひしと感じられるけれど、あんなに多くの時計をわざわざ置くのは……主人の時間に対する思いに狂気に似た感情をみたような気がする。そこがちょいと空恐ろしかった。


黒猫館の殺人 (講談社文庫)黒猫館の殺人」 綾辻行人
まさか、こんなスケールのでかい話だとは思わなんだ。びっくり(゜o゜) だから、読了後に伏線チェックをするのがものすごく楽しかった。でもこれ、気付こうと思えば気付ける内容だし、現に私も「ん? なんか今違和感が…」と思ったこともあり(読み流してたけど・苦笑)、もっとその時に追究してみればよかったな、なんて。…でも真相に気付くのは有り得ない(笑)。
綾辻さんが書く話の構成として、過去と現実、手記と現実、本島と島など、離れたところの記述を交互に書くことが多いですが、それが続きを読みたくさせる作りになってるよなぁ、と今回特に感じたな。いっつも、「え、ここで途切れるの?!」とうずうずさせられるので(笑)。


暗黒館の殺人 (上) (講談社ノベルス)暗黒館の殺人 (下) (講談社ノベルス)暗黒館の殺人」 綾辻行人
館シリーズの最新作。あらすじは……。何て書けばいいのか(笑)。そうだな…”風変わりな建築家”のたてた大きな屋敷で”私”や”僕”が体験する、不思議な出来事の真相とは。そしてそこに住む一族の習慣の意味とは。十八年前の事件は、今回の殺人事件と絡み合っているのか。など、とにかく、不思議なことや、殺人事件に関する謎があちこちにちりばめられてる。また、人と人のつながりも見物なのではないかな。
館シリーズの中では一番長い、本当に”大作”。…しかし、私個人の感想としては、確かに色々な意味で大作ではあるけれども、うーん…といった感じ。イメージとしては…こう、淡々としている…ような。殺人も不可思議な謎もたくさんあったけれど、大きな盛り上がりみたいなものは無かったような気がする。といっても、そういった批判など打ち消してしまうような「驚き」はたくさんあった。色んなとこで「えーっ!!」て思わず声をあげてしまった(笑)。まぁ”ダリアの宴”の真相については、さして驚きは…しなかったかな。なんとなく察しはついていたし。とはいえ……気味が悪い”宴”であることは確かだ…。
それから、また文句になってしまうのですけれど、色々なことがうやむやになって終わってしまっているのがちょいと、うずうずするというか。知らなくてもいいことなのかも知れないけれど、やはり全てを気持ち良く終わらせて欲しかったなぁー…と。いや、ちゃんと話は終わっているのけれども。まぁでも、とある人物のことが詳しく知れる作品だし、もう一度最初から読んだら面白いと思う。ふふ。それに、この書き方はやっぱ綾辻さんにしかできないよね、と感じさせられました。彼の色がありありと出ているという意味でも、この作品はやはり大作だと私は思う。作者が後書きで、今後どうするのかという声を聞いた、と書いておられたけど、私はこれはこれで全然ありだと思う。この話は、いつか書いて欲しかったし。やっぱ、物語の核となる人だし。