夜のピクニック

夜のピクニック (新潮文庫)

夜のピクニック (新潮文庫)

久しぶりに「こいつはいい本だ!」という作品に出会った。いやー衝撃だったわ。
これを手に取ったのは鎌倉に旅行に行った時なのだけど、帰る前くったくたに疲れてたのに、気を抜くと閉じそうな瞼に気合を入れながら最後まで読みきったのを覚えておる。
起承転結が激しいとかそういうのはなく、穏やか〜な。んでもって何ていうのかな、自分の高校時代を思い出して、物語の登場人物と重ね合わせてしまって、甘酸っぱい気持ちに浸ったなあ。これ、高校生は読んでみるべきだと思う。そして、高校を卒業して大学なり社会に出てからもう一度読む。感想がどう変わるか、てのを私自身も体験してみたかった、と思った。
タイトルの通り、内容は高校生活最後のイベント「歩行祭」のお話。徹夜で80キロを歩く、という変わった行事が始めから終わりまで描かれてる。自分が参加してるわけでも、経験したこともないのに、主人公達の気持ちがリアルに感じられるのが不思議…。始まったばかりの頃は楽しくはしゃぎ、疲れてきた時は辛さ、しんどさ、行事事態に疑問を感じたり、そして夜になると不思議に元気になる…といったあたり。夜は一緒に過ごすということがないだけに、テンションが上がるの、過去を思い出すと「そうそう!」てなる。足が痛いとか、こっちまで顔をしかめてしまう…歩きまくると足全体が針金でもはいったかのように、滑らかに動かせないんだよねえ…とか思いながら読み、頑張れ頑張れて応援してしまう。
よくある噂話も微笑ましかったなあ。誰と誰が付き合ってるだの、こうこうこういう関係だの。あの子は誰が好きだの。で、きっかけを探って意中の男子に近づいてみたり…。うわー甘酸っぱい!!(笑) それでいて何だか爽やか!! 読後に憑き物が落ちたかのような(京極的言い回し…)気持ちになるんだよなあ…。
ほんといい小説だ…。主人公の女の子も、ある決意を抱えての参加となったのだけど、うまい具合にことが運び、ほっと胸をなでおろす…。
文庫の表紙もなかなか良い。虫の涼やかな鳴き声が聞こえてきて、潮風が吹いてくるのを感じられる気がする…。
2004年7月刊行。