舞姫通信 重松清

舞姫通信 (新潮文庫)この方のお話を読むのは初めてでした。それだけに雰囲気や物事の表現力に衝撃を受けました。
途中少し中だるみしたような感じがしたけれど、それでも一気に読めました。物語の終盤にスピード感を感じたからかしら。
文字を追いながら、「死」について自分がどう考えているのか、改めて考えさせられた…と思います。
ただ、物語の舞台が高校ということなので、出てくる高校生(舞姫通信の執筆者)の考えについては幼いなぁ、と鼻で笑ってしまう自分がいたりして、「あー、自分の頭も昔なりたくないと思っていた大人みたいにかたくなっている」と実感。そういうものなのかしら。自分では、まだまだ価値観に若さがあると思っていたのだけど、そうじゃないのだなぁ、とちょいと凹んだ(笑)。
んで、死についてですが。
登場人物の城真吾は「死は、生きている中での一つの選択肢である」のようなことを伝えたわけだけど(少し違うかな…)、そうなのかな。そう感じるのは多分、私が死にたくないという気持ちを持っているからだと思うけども、人生における選択肢の中に「死」を入れるのは…どうかと思った。
そんな私も、三、四年前には「死にたい」と本気で考えてたことがあった。けど特に何をしたってわけでもない。カミソリを手首に当てたこともないし、高いとこに立ったこともない。今思えば、ものすごい「逃げ」てたのだと思う。当時の自分はそれでもものすごく悩んでいたから、その時の気持ちを全否定はしないけど、現在の自分は「アホなこと言ってんじゃねーよ」って思うわけです。「弱い」「考えが甘い」「逃げてる」と。私は強い人間ではないけれども、それなりに強くいたいと願っているから、…まぁ、当時から考えると少しは成長したのかな、と嬉しくなったり、…ならなかったり。
「死」はいつ自分に降りかかるか分からないけれども、事故などに巻き込まれない限り、「死にたくない」という気持ちがあれば、距離的に「死」は少し離れるのではないかな、と考えた次第。
登場人物にちょこっと感想を書いていこうかしら。
原島教諭:この人の舞姫通信に対する態度は、自分と一番近いかも知れない。
佐智子:嫌いです(苦笑)。城真吾に関して、「死」を世間に投げかける…みたいなことを建前として持ちながら、心の底では、自分が恋人の死を乗り越えるためにやった…みたいに思える。…そういった真面目なことを抜きにしても、この人はすごい卑怯な女だと感じた。
宏海:可哀相な人だね(苦笑)。佐智子の前でリクオになることを淡々とやっているが、……うーん。この人にとって、その五年間って何だったんだろう。分かりません…。
城真吾:最後のあれは、ヤケになっての行動なのか…判断がつきかねますが。彼の信者とは別の意味で衝撃を受けた。その衝撃の意味は、自分でもよく分からない。…奥が深い。