オーデュボンの祈り

オーデュボンの祈り (新潮文庫)

オーデュボンの祈り (新潮文庫)

初めて読んだ時は、「何か雰囲気のいい話だったけど、シュールというか、うーん?」といった感想だったのだけど。再読した今回は、ラストに鳥肌がぞわわわわわわ、と立った。淡々と進むシュールな内容の印象というのは変わらないけれど、読後の印象はだいぶ変わったなあ。
これは一応ミステリなのかね。新潮ミステリー倶楽部賞を受賞した作品だそうだけれど。それはそれでまた、おもろいなあと思えるねえ。
あらすじ。喋るカカシのバラバラ殺人事件の解明。いやいや(笑)。いやまあ、確かにそうなんだけど、こうやってかくと「え?」だな(笑)。うーん、どういうあらすじがしっくりくるかなあ。コンビニ強盗後、伊藤は気がつくと見知らぬ島にいた。どこか抜けたところのある男・日比野に島を紹介してもらうが、住民は不思議な人たちばかり。その最たるものが、未来が見える(知っている)カカシ・優午。戸惑いながらも自然とそれらの人たちを受け入れる伊藤。優午をバラバラにし、その頭部を持ち去ったのは誰なのか、そして伊藤の運命は。…こんな感じかな。伊藤の運命は、てのが気に入らんけど…他に考え付かないわ。
優午バラバラ事件の真相も気になるけど、私がそれより気になったのは、「この島に足りないものは」という島に昔からある問いの答え。この答えが作品のラストを彩るわけだけれど、伏線があっただけに気持ちが高揚しちゃった。「まじ?すげー!」とバカ丸出しな感じで(笑)。素敵だったわ〜。たまらん。ちなみに、私が途中まで考えていたのは「悪意」。人間の持つドロドロしたあれ。それが無い。聖人君子ばかりが集まる島でないだけに(人を殺すことを認められた人がいたり、あいつは変だといったことをすっぱり言ったりetc)、伊藤同様違和感のようなものを覚えたんだよな。きっとこれ!という正解なんて無いのだろうけど、作品の中での答えが答えだったんで、読後感はすごくよかった。
あと「神様のレシピ」。これいい。ラッシュライフにも登場人物の会話に出てきた。運命とかそういった類の言葉よりも、素敵な言い方だな〜と。
喋るカカシが作られた経緯やその理論(?)もいい。そしてそのカカシが考えていたことも(鳥に関して)。
城山という悪魔の如き人物が出てくるが、それがあっても「この作品を読んで良かった」と思えたなあ。ちなみにこの城山、漫画「怨み屋本舗」に出てきそうだと思った。そんくらい非道。冷静で頭がいいだけに、恐ろしかった…。のほほんとした雰囲気ながら、こういった真っ黒な部分もある…これが伊坂クォリティなのか…。