有栖川作品三冊

マジックミラー (講談社文庫)『マジックミラー』 有栖川有栖
講談社文庫から出てる有栖川氏の一作目。有栖川氏といえば、火村と有栖川有栖(私)のコンビのシリーズですが、それは二作目からの模様。
さ、本書の感想。すごく読むのに時間がかかった…。何故か。時刻表を用いたトリック…というかアリバイ作りがあったからであります。何度もページを前後して読みましたよ。時刻表モノとカテゴライズするには…ちょっと違和感がありますけれども、こういった推理モノは読むのが初めてだったので、何度かくじけそうになりました。頑張った(笑)。
この作品でのポイントは双子、とタイトルのマジックミラーでしょうか。そういえば、この作品の登場人物が、アリバイ談義を大学のミス研みたいなところでやってます。これは読みやすかったですね。我孫子氏の『8の殺人』でも密室の講義がされておりましたが…あれはちと読むのが苦痛で苦痛でたまらなかったけれども。
読み終えて、ただ切ない…と。なんだか、ううむ。切ないことが大々的にあったわけではありませんが、読了後はなんだかすごくそういった気分になってしまいました。
最後で、とあるビックリ要素があるんですが、それを目にした時思わず、「そんなのありかよーーーー!!!」って叫んでしまった。別に卑怯でもなんでもないのだけど、つい。
某双子が殺されるのですが、そのトリックはなるほどすごいなぁ、と思った。作者自身も非常に自信があったそうです。でもやっぱり、時刻表トリック…というかアリバイ作りはややこしかったな(笑)。



46番目の密室 (講談社文庫)「46番目の密室」 有栖川有栖
火村先生とアリスシリーズ第一弾。火村英生は社会学部の助教授で、アリス曰く臨床犯罪学者。アリスは、推理作家で火村とは学生時代からの付き合い。この二人の間に流れる空気は好きですねぇ。二人を恋人に仕立てた同人誌もよく見かけます(苦笑)←読んだことないけど。
この話は、作家やその編集者の集まるクリスマスパーティーで起こった殺人事件を二人が解決するもので、十年前のホテル火事が根底にあります。
密室トリックの内容は、すごいなぁと思わず唸ってしまいました。しかし…結構想像するとキツイトリック。現実性が無いとかでなくて、こんなんされたらたまったもんじゃない、みたいな。殺されること自体たまらんけども。
私が「うおっ」と思ったのは、事の真相でした。動機に繋がる内容なのですが、非常に微妙な気分にさせられました。しんみりしつつも、結構な自分勝手と言えなくもないかなぁ、と思ってみたり。
そして、気になるのが被害者である真壁(作家の大先生)が言ってた「天上の推理小説」ですね。それは一体どんなものなのか…。読んでみたいような、みたくないような。
余談ですが、この話の解説は綾辻さんが書いております。なるほど、と思いましたね。←そんだけか。



ロシア紅茶の謎 (講談社文庫)「ロシア紅茶の謎」 有栖川有栖
火村先生とアリスシリーズの短編集。全部で六編が収録されておりますが、「屋根裏の散歩者」「赤い稲妻」「ロシア紅茶の謎」が好き。他に「動物園の暗号」という話があるのですが、最後の二文がすごく強烈でしたね。だのでそれを読んだ瞬間どんな事件だったのかつい忘れてしまいそうになった。
「屋根裏の散歩者」は、事件の真相云々よりもその過程が面白かったです。被害者の書いてた日記で、数名の人間をニックネームで書いているのですが、思わず頬が弛んでしまった。…私はどう書かれるのだろうか…と思いました(笑)。