綾辻作品感想文(三冊分)

「フリークス」 綾辻行人
とある病院の精神科病棟を舞台にした、ちと変わったミステリの中編が三編。
夢魔の手-313号室の患者-
このお話は、読んだ後少し混乱してしまった。何が現実で真実なのか…。多分それは私の読解力が足りないからと思うけれど。収録されている三編のうち、これが一番患者さんの体験がイタかった。
・409号室の患者
ラストにびっくり。改めて、作中の「一つの心を灰に葬った」に心がズシンときました。そういうこともあるのかしら……と、切なくなりました。最後はお世話をしている看護婦さんの口調でお話が終わるのが、なんとも言えませんでした
・フリークス-564号室の患者-
読者への挑戦があります…が、わからなかった。読み終わった後は、犯人が誰というよりも、その動機や背景でズッシリ感が……。色々な意味で、後味がよろしくなかったです。作品が悪いという意味じゃなくてね、内容が……。


人の心に触れている作品なだけに、自分とは全然関係のない世界の話、とはどうしても割り切れない。自分のことや、そのまわりのことを色々と考えてしまいます。


どんどん橋、落ちた (講談社ノベルス)「どんどん橋、落ちた」 綾辻行人
短編が五編。「犯人当て小説」ということで、再読しつつも挑戦したけれども……結果は、全戦全敗です…あは。著者の言葉にもあるのですが、犯人当てと言えど、本格推理小説ではないのであります。でも他では読めないような作品ばかりで、とても面白かったです。では、一つずつ感想を。
・どんどん橋、落ちた
この本自体、以前途中まで読んでいて、印象的だったので真相は覚えておりました。そういう目で読むと、これまた面白かったです。再読に意味がある感じですね(笑)。
・ぼうぼう森、燃えた
「してやられた」という感じです。まぁ、読んでみてください(笑)。印象に残ったのは、終り方。だ、大丈夫か…。私は、これはこれで有りだと思います。>某登場人物様
フェラーリは見ていた
話の真相に驚きいた。フェラーリがまさか○○とは。そうか、そういうのもありだよなぁ〜ふふ。て、フェラーリが「世界一暴力的な淑女」と呼ばれていることを知りました。と、ともにあるお方の顔が脳裏に…(笑)。以前番組で車の操作について、「押さえつけてるのがいい」だの言っていたことを思い出した(ディティールは違うかも)。ふふ、そうなのか……にやり。
・伊園家の崩壊
収録されてるお話の中で一番好き。というか、不謹慎ながらもめちゃめちゃ笑ってしまった。今度からどうやって「あれ」を見ればいいのか……(笑)。読みながら、確かに「崩壊」だなぁと感じましたが、最後…ほんとに「崩壊」しちゃったよ……なんか切ない。
・意外な犯人
一風変わった書き方で。本当に番組でやったものなのだそうですね。だからか、書き方に気を使われたそうですけれど。で、犯人当ては一応…当たりました。が、フルネームをきちんと正しく言うことは出来無かった。これできた人、相当すごいと思う(いるのかそんな人・笑)。


眼球綺譚 (ノン・ノベル)「眼球綺譚」 綾辻行人
短編集。推理小説ではなくホラーですね。綾辻さんの本領発揮でしょうか。全七話。印象に残った作品だけ感想を書きたいと思います。
・再生
夜中に静かな部屋で読んだら恐くてたまらないなぁと思った話でした。…昼間読んでて良かった(笑)。変わった体質(?)を持つ女性「由伊」が、語り部である主人公に近寄った理由に背筋を凍らせ、ラストシーンにも背筋を凍らせ…。
・特別料理
食前、もしくはご飯を食べながら読むのはやめた方がいいかと。何度も途中でギブしそうになったお話でした…。ひえええええ。しかし、こんなお店ほんとに存在するのだろうか。無い…と信じたいですなぁ。
・人形
背筋が寒くなる話でした。この話は…、うーん。ラストというよりも、その経過が恐かったです。じわじわと…きます。この話のようなことが自分に降りかかったら、発狂してもおかしくないよな、と思いました。
・眼球綺譚
表題作。初めて読んだ時は、本を閉じてから恐くて恐くてしょうがなかった記憶があります。二度目に読んだ現在は…ううん?という感じで(苦笑)。感性が鈍くなったか? とちと不安になってみたり。いやでも、話が面白くないというわけではなくって。うーん。恐さを感じる自分の標準が少しばかり高くなったのかなぁ、と。ただ、このじっとりとした空気だけは未だに不気味です…。