京極氏作品感想文(四冊分)

文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)姑獲鳥の夏」 京極夏彦(ネタバレ有り)
シリーズ第一弾。とは言え、初めて私が京極作品を読んだのは第二作目から。順番間違った。アイタタタ。
一作目にして、キャラクターがどういう人物かというのがばっちり分かると思う。多少、榎木津がマトモですけれど(笑)。ところで、世間では誰が一番人気あるのかしら。私は京極堂が好き。榎木津も良い。皆、一癖も二癖もあるからたまりません(笑)。ただ、関口君はあんま好きじゃないなぁ。
で、このお話。二十ヶ月も子どもを身篭った女性の謎と、その夫の失踪の謎を解くのが大筋でしょうか。これだけではないけど。物語に関連して、非常に関口君が危険…。好きな登場人物では無いとは言え、ちょいと心配になってしまった。しっかりしろー!
物語の中核は、「目と脳」と「人工授精」といったところでしょうか。後者については、今この時代に生きている私からすれば、特に驚くようなことではないけれど……そうですよね、まだ出てきたばかりの頃だったら、禁忌に触れたと思うかも知れない。
そう言えば、このお話は実写化されるんだったね。キャスティングについては今更どうこう言うつもりはないけれど……木場修は……さすがに違うと思うよ……_| ̄|○



文庫版 狂骨の夢 (講談社文庫)狂骨の夢」 京極夏彦
このお話は、宗教色の強い話だなぁと。あと、ちょっと日本史も。宗教はともかく日本史は苦手なので、最後の謎解きでちょいと時間をかけてしまった。
第三弾まで読んだことになるけれども、やはり私は関口が苦手だなー。やはり京極堂がいいですねぇ。そして榎さんはどんどんおかしな人に…(笑)。いや、全然構いませんけれど。「ウブメ〜」の榎さんが嘘のように感じます……ふ。
この話は、登場人物の現実と夢、そして現実世界の殺人事件や集団自殺など、たくさんの要素が詰め込まれていて、これをどのように収束するんだ? と思いながら読みました。それを、謎一つ残さずに解決させた京極堂…いえ、作者がすごい。前作二作ほど後味は悪くなくて、むしろ良いとも思えるラスト。海ってのがまた。似合わない…(笑)。
中でも震えてしまったのが、文覺長者のラストでした。彼の下に付き従っている登場人物との違いが明確に出たというか…本物の信仰者だったんだなぁと。
あ、触れるのを忘れてた。タイトルにもあるように、「骨」というか「骸骨」が共通の話題であります。読み終わって、タイトルの「夢」ってのがなるほどなぁ、と思いました。



文庫版 鉄鼠の檻 (講談社文庫)鉄鼠の檻」 京極夏彦
読了後思ったのは、いつもとちょいとばかし色合いが違うかも、ということでした。その一つは、京極堂をはじめとしたそれぞれの登場人物が山中に集まっているから…でありました。憑き物落とし以外では外出はしないというイメージがあったものですから。そんなわけないんだけどさ(笑)。あと一つは、殺人の動機です。正直「…え?」と肩透かしをくらったような気がしたのですが、それは私が一般的な推理小説に頭が洗脳されているからなのかもしれん、と感想を改めました。
ストーリー全体を通して禅をメインとして扱っていますが、一般的にアジア(日本含め)に普及されている宗教は苦手なので、読むのに少し苦労を…。何度もページを前後させて、なんとなく理解しましたが、読む前よりも知識は入ったかな…? という感じでございます。
そして、このお話にはとある要素が絡んでいたわけですが。まだ本筋に入る前にサラリと出て来た会話を読んで、「まさか」と思っていたら予感が的中。びっくりしました。うわあ。
シリーズ四作目ですが、改めて京極夏彦という人の博識ぶりに脱帽…でございました。



文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)「絡新婦の理」 京極夏彦
まずはたわいもない感想から。関口君出てこないのかしらーと思ったら、最後に出てきましたね。そんだけ。で、京極堂と榎さんが二人でこそこそと話している図柄というのは、なんとも素敵ですね(^^) そして、木場修。この人はこう…自分の足で捜査し、行動の理由は後からついてくると言った考えを持っていて、あまり理論的なイメージが無かったのですが。そうじゃなかったですね。長年の経験からくるものだと思いますが、このお話では理論的な一面をのぞかせましたね
さ、本編。二つ(?)の事件がうまいこと重なるという…ものすごい構成のストーリー…。陳腐な言葉でしかもはや表せないよ。
んでもって、真犯人の頭脳に脱帽です。…しかし、それにしたって人が死にすぎ。京極堂も言ってたような気がしますが、本当にあの人はそれでいいのか、満足なのかと思いました。
そして、今回の話はジェンダーについて触れられていますね。多少は読みやすいかな、と思ったが……甘かった。京極堂と葵の会話、あまり理解できず……くやしかった(笑)。
私はこの作品、「魍魎の匣」の次に好きだな。舞台の一つとして全寮制の女学校ってのが、なんともわくわくしますね(笑)。おかしな意味でなくさ。ミステリと全寮制の女子校てのは、すごくマッチしてないかな?(笑)



※「魍魎のハコ」が無いのは、現在再読中だからであります。