半落ち

半落ち (講談社文庫)

半落ち (講談社文庫)

積み本を一冊消化。映画化もされた作品をようやく読了。
認知症の妻を殺害した警察官が、殺害から自首までの空白の時間に一体何をしていたのか、を同僚の刑事、検事、弁護士などがそれぞれ明らかにしていこうとするのが主なストーリー。
決して口を割ろうとしない加害者に、読んでる方としてはドキドキが次第に高まっていくのだけど、個人的にはそれプラス、刑事・検事・弁護士・記者の職場環境や立場を真剣に読んでしまった。中年男性の悲哀とでも言うべきか、やけにリアルに感じられたなあ。リアルと言っても、私の持つイメージと比較して、だけれども。このあたりの描写で、「あ、この作家さん肌に合うかも」と。
肝心の真相については、それほど批判されるものでは無いだろうと。確かに、最後の数ページで真相が開かされていくのには、すごい急ぎ足な印象はあったけど。かたくなに黙秘を貫いていた理由も、この加害者の気持ちを思うと切なくなる…。真相が明らかにされても否定したシーンは鳥肌たっちゃった…ああいうの好きだ…。
一つ突っ込みどころがあった。
この人に関わる人たちは、初めは空白の時間を明らかにすると個人の思惑も多少ありながら、対面していくわけだが…。加害者の「誰のために生きている」という加害者の問いかけに皆が口を閉じてしまったというのは…ちょっと宗教的というか…怖いなと思ってしまったわ。
それにしても、認知症の人への合意殺人というのは…ここ数年でよく耳にするようになったな…。心臓がきゅう、となる…。