孤島の鬼

孤島の鬼 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

孤島の鬼 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

古典…なのかな? それらの醸し出すおどろおどろしい雰囲気、たまらんです。黒々とした紫色の空気が流れているような気がする。作者の地の文も好き。あと、「怪老人」て言葉、何か響きが好きだ(笑)。
創元推理文庫版では、1番目がこの作品。カバーの雰囲気がとても気に入ったので、この文庫を選んだのでした。
1番目から、同性愛が絡んでくるとは思わず、ややびっくり。頭もよくて顔もいいんだっけ?そんな友人に熱烈な愛情を持たれた主人公。しかも、まんざらではない場面も多少あってさらにびっくり。でも、主人公は心から愛する女性に出会ってしまい、よもやの三角関係に!
しかし、悲しくもその女性は殺されてしまう…し、頼っていた友人探偵も人がいっぱいいる海辺で殺されてしまった…。この友人の死ぬ場面、めっちゃ怖かった。季節は確か夏で海水浴に来ている人がいっぱいいる中で、友人は砂風呂状態のまま…楽しい海水浴という状況とは正反対の事件、気持ち悪い怖さを感じた…。
あと、島での出来事も全て恐ろしい。身体障害者を集める怪老人の不気味さに、宝探しのための洞窟の冒険譚。枝分かれしまくりの洞窟で、命綱ともいうべきロープを切られてしまってからの絶望感。…主人公を愛する友人が、本能にちょっと走ってしまった場面は何だかすごいドキドキしたわ…。
もうそのまま死んでしまうのか?!と思うものの、光明が! 結果、二人は洞窟から脱出することができたが、その身は信じられぬ変化が…。恐怖とショックで一気に白髪になる話って、こんな昔からあったんだなあ…。
ラストの大団円は、主人公が島でであった女性と結婚を果たし、見つけた財宝で金持ちに! だが、彼を愛する友人は病によってその後死んでしまったと。で、その母親から主人公に宛てた手紙で、この物語が終わるのだけど、切ない…。あまりにも切ないラストだった…。
息を引き取るまで、父の名も母の名も呼ばず、主人公の手紙を抱きしめ、その名前を呼んでた…って。ほんとに愛してたんだなあ、とすんごい悲しくなっちゃった…。
1930年刊行。