氷菓

氷菓 (角川文庫)

氷菓 (角川文庫)

地の文が一人称の小説を読むのは初めてではないはずだけれど、作家の力量が出るのか何なのか、本の世界観にほとんど入り込むことができなかったなあ。ううむ、作家の力量がどう、というより、主人公の主義思想にものすごい反発を覚えたのが理由かもしれん。社会人が読んで、どう思うかちょっと知りたいわ。鼻で笑っちゃう感じ。友達がいるのが不思議。さすが小説。なんて。
とにかく不愉快になる主人公は高校一年生の男の子。舞台は高校。の、古典部。物語は主人公の姉の手紙から始まり、流されるままに入った古典部(廃部同然だったので、部員は皆一年生)の仲間と、日常の謎を主人公が解き明かす、という話。
日常の謎はともかく、真の謎を解き明かしていくあたりはちょっと面白かったかな。古典部の文集を作るにあたって、バックナンバーを探すところから始まるのだけれど、文集のタイトル「氷菓」の名前の謎、第2号に書かれていた記事と、部員のお嬢様の親族との関連性を皆(4人)で調べていく。
で、この主人公。裏表紙の説明に「省エネ」な人物だと書かれていて、「へぇ」と思って読み始めたものの…そんな簡単な一言で済ませていいのか?!と思わずにいられない人物だった。探偵役だけど、思考停止人間というか…何と表現したもんか…諦めとも面倒くさがり、とも違う、家庭環境等何も問題ないのに、自分以外の物事を静観している、高校生らしさがさっぱり無い子。そんな自分の性格について自分で分析したりしてるけど、それが何かもう、イラッ!!!!とした。女子を「お前」呼ばわりもかなりイラッ!!!! 心の中で「こいつ」と思うのはいいが、「お前」はいかん。フェミニズムがどうとかいうのでは全くなくて、主人公の性格の問題。この性格で、口に出して「お前」かよ!?ていう。
ただ、ラスト付近で、ちょっとだけ変化が見られる。が、目に見えて表れるわけでもないし、いきなり感もあった。心の動きがよくわからんかった。
古典部」という単語だけに惹かれて買って、読んだものの、肩透かしをくらった感。この作者の小説は「ボトルネック」と「インシテミル」を読んだけれど、色合いはかなり違うなあと。
2001年刊行