葬神記

表紙イラスト。ワカマツカオリだ!てのが入り口だった気がする。ほんで裏表紙のあらすじを見て、面白そうだったので購入。中もちょっと見たかなあ。なかなか骨太な感じの文章だったのも、購入を決めた理由の一つ。
主人公は、古屋というあまり運の無い男性。一応社会人。不運続きだった彼の人生で最も、不幸な目に合ったと言っても過言ではないのが、この小説の事件。遺体の第一発見者であるが故に殺人犯と思われたり、ネットに晒されたり…。
そして探偵役が、一法師全。冷静で頭の切れる人物。考古学者ではないみたいだけれど、そちら方面の専門家のもよう。「考古探偵」と呼ばれているとか。
と、話には遺構だとか青銅の銅鐸だとかが出てくる。キーワードは「ぬかとさま」。ほんの少ーーーしだけ、京極を思い出したなー。
話の最初に起こる殺人事件が、ずーっと最後まで重要な鍵になってて、楽しめた。犯人は最初の話で判明するのだけれど、それだけじゃ事件そのものは終わってなかった、という。こういう展開好きだ。事件が起こるきっかけともなった、黒幕的人物が最後に明かされるのだけれど、全然分からなかったなあ。そっか、やられた、て思える。
登場人物は名前付きの人が結構いて、誰が誰だっけ?てなるけど、気にしなくても大丈夫だったかも。遺構の発掘のアルバイトを古屋がすることになり、これがこの話の舞台なのだけど、そのアルバイト仲間がなかなか覚えられなかったー。しかもどいつもいい性格してるから、全部同じに見えるし、覚えたくもならない。性格悪すぎてもうね。多分、設定は大学生以上だろうに、アルバイトとはいえ子どもっぽいというか、ムカーッ!!とすること必至。
んで、現代らしいなあと思ったのが、この発掘現場にも裏サイトがある、て話になった時。殺人犯と疑われた古屋が晒されたり、何かあるたびにお祭り騒ぎになっている様子。しかも事件はマスコミも大きく報道していたもよう。個人的に、この手の利用者ってのはウェブ上では盛り上がってても、実際は意外と冷静だったりするんじゃ?と思っていたんだけども、そうじゃなかったから驚いた。話のラストの方ではすごい争いが起こり、冷静な一法師もあまりのショックに使い物にならなくなったし(通常の思考が通用しない為)。ここら辺の描写は実に、「うわぁ…」と頭を抱えたくなる。
ただ、そこまで恐慌状態になったのはよく分からんかった。ウェブ上とはいえ、小さなコミュニティ内での、同じ思考を持つ者同士のやりとりってのは危険だとか、そういうことなんじゃろか。読んでて、皆が本気っぽくて、いろんな意味で恐ろしかったわ。
この話はシリーズ物で、今のところ全四作出ているもよう。なかなか読み応えがあって面白かったので、続きを読みすすめていこうと思うー。
2011年刊行