殺人鬼フジコの衝動

殺人鬼フジコの衝動 限定版 【徳間文庫】

殺人鬼フジコの衝動 限定版 【徳間文庫】

…最初から最後まで鬱な物語であった…。まさに殺人鬼の「衝動」だった。視覚的には、ホワイトアウトとか、フラッシュが光ったような感覚に陥った。
個人的には、フジコの中学生時代が一番読んでてきつかった。小中学生時代の女同士の付き合いのリアリティがこれでもかと表現されてて、色々思い出したわー。自分が嫌な思いしたのはほんのちょこっとだけだけれど、ずっと気を使って過ごしていたフジコはまさに地獄だったろうなあ、と…。
そんなフジコも段々段々と知恵をつけていくわけだが、どうしても人生がうまく展開しない。ちょいちょい出ていた母方のおばのセリフも、最後まで読んだところでずっしり響く。もう何度読むのをやめようと思ったことか。内容がきつくて、リアルで、もう今日はこれ以上読めないわ…となったなあ。
どう完結するのこの話…(どんより)と思いながら、最後の方を読みすすめていくと、結構突然フジコの物語は終わる。かなりホッとした…(笑)。最後に行くほど人の死ぬペースが大変に早くなるし、ぐったりするのだもの。とはいえ、フジコを頭から否定できないんだよなあ。殺人はいかんが。背景がなあ…。
よくいく書店で平積みにされていて、煽り文句にも惹かれて読んだわけだけれど、期待を裏切られるなんてこともなく、「読書を楽しむ」ことはできた。ただ、内容は大変に鬱だった。続きを読むたびに無駄に凹んだりした。
いやー最後まで書ききった!というパワーを感じたわ。怖いけれど、この人のほかの作品が結構気になる…ううむ…。
ポップだか帯だかに書かれていたのが、最後のページに驚愕させられる、という風なことだったので、それを楽しみに読みすすめたっけ。「うわあまじで?!」といった大きな驚きではなくて、じわじわとゾクリとする感じだった。読後感の悪さを最後の最後に引き立てられた気がした。
私が買ったのは限定版なのだけど、帯かと思ったものは帯でなくて、表紙そのものだったのが驚いた。斬新だわ。あと、「私は、フジコ」という短編の冊子がついていた。次作のヒントがあるらしい…。読んだけど、面白そうだったから困る(笑)。ううむどうしよう。この人の小説、こわいのだもの!(女だから余計にそう思うのだろうか…)
「2008年刊行」